うつ病の新しい治療法
群馬県で唯一のrTMS療法
当院では、うつ病に対する治療として、県内では初となる反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS療法)を令和5年4月より導入しました。アメリカでは2008年に、カナダ、ドイツ、フランス、オーストラリアでは2003年に認可されるなど、世界的には標準治療の一つとされている治療で、日本でも2019年に保険適応となっています。当院に導入される機器は、国内で唯一保険適応となる、Neuronetics社製のNeuroStarになります。rTMS療法を、うつ病治療の新たな選択肢として提供させていただきます。以下、rTMS療法のご説明となります。
rTMS療法の特徴
・薬の治療が効きにくいうつ病にも一定の効果が認められること
・副作用が少ないこと
が挙げられます。
rTMS療法は、コイルに電流を流すことで生じる磁気エネルギーにより、低侵襲性に脳内の神経細胞を刺激し、脳の活動性を変化させることで、うつ病の治療を行います。
対象となる患者さん
成人でうつ病の診断を受けている患者さんであり、かつ、
・1剤以上の抗うつ薬の至適用量を十分な期間服用しても、効果が認められない患者さん
・抗うつ薬による副作用が顕著で、十分な薬物療法が継続できない患者さん
です。
本人が同意していることが前提であり、原則として、主治医の了解を得ていただいての治療導入となりますので、上記対象となる患者さんであり、かつ、以下にお示しする「rTMS療法が受けられない患者さん」に該当しない方で、rTMS療法を希望する方は、まずは主治医にrTMS療法を希望することをお伝えいただき、了解を得たうえで、当院にお問い合わせください。
rTMS療法が受けられない患者さん
・18歳未満の患者さん
・今回のうつ病エピソードにおいて、既にrTMS療法を受けている患者さん
性障害、身体表現性障害、人格障害、広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)、多動性障害(注意欠陥・多動性障害)等、うつ病の診断ではない患者さん
・リワークプログラムに参加可能な程度に回復している患者さん
・切迫した希死念慮があるなど重症の患者さん
はrTMS療法の適応外となっています。
また、
・人工内耳、磁性体クリップなどの金属を頭部に植え込んでいる患者さん
・心臓ペースメーカーを植え込んでいる患者さんはrTMSの禁忌となっているため治療は受けられません。
他に、頭蓋内・頭部にチタン製品(インプラント含む)がある、てんかん・けいれん発作の既往がある、けいれん発作が起こしやすくなる薬(三環系抗うつ薬、ゾテピン、クロザピン、メチルフェニデート、テオフィリンなど)を内服している、アルコール・カフェイン・覚せい剤の乱用・離脱時、妊娠中、重篤な身体疾患を合併している、などの患者さんは、rTMS療法を受けられないことがありますので、主治医に確認もしくは当院にお問い合わせください。
rTMS療法の副作用
・頻度の高い副作用:頭皮痛・刺激痛(30%前後)、顔面の不快感(30%前後)、頚部痛・肩こり(10%前後)、頭痛(10%未満)
ほとんどが刺激中に限局した副作用で、刺激強度を下げたり、慣れの効果によって軽減されます。治療が終わってからも違和感が残存したり、頭痛を惹起することがあります。
・重篤な副作用:けいれん発作(0.1%未満)、失神(頻度不明)
けいれん発作そのものは、自然に終息しますが、けいれん発作に起因する外傷や嘔吐物誤嚥などの危険が想定されます。これまでのrTMSに起因する全てのけいれん誘発事例の報告で、けいれんを繰り返す症例や、てんかんを新たに発症した症例は一例も報告されていません。また、抗うつ薬によるけいれん誘発の危険率(0.1~0.6%)と比較しても、rTMS療法が特別にけいれん誘発の危険が高い訳ではありません。
・頻度の少ない副作用:聴力低下、耳鳴りの増悪、めまいの増悪、急性の精神症状変化(躁転など)、認知機能変化、局所熱傷など。
聴力を保護するために、刺激中は耳栓を着用していただきます。治療を要する躁転の可能性は1%弱と報告されています。
以上より、rTMS療法の安全性・忍容性は、電気けいれん療法や抗うつ薬治療に比べても優れていると言えます。
繰り返しになりますが、
本人が同意していることが前提であり、原則として、主治医の了解を得ていただいての治療導入となりますので、対象となる患者さんであり、かつ、治療が受けられない患者さんに該当しない方で、rTMS療法を希望する方は、まずは主治医にrTMS療法を希望することをお伝えいただき、了解を得たうえで、当院にお問い合わせください。